桑田佳祐「悲しい気持ち」

人の心は移ろいやすい。陽気に振る舞っていたと思えば、急に落ち込んで暗くなったりと、感情の起伏は多かれ少なかれ誰しも持っている。

そして俺はいま気分が沈んでいる。闇雲に右往左往しているうちに、自分を見失い、自分自身が嫌いになってくる。

そういうときは必ず、でもないが、この曲を思い出す。俺が高校生の頃にリリースされたこの曲は色恋沙汰の終わりを歌っているが、何よりも印象的だったのはタイトルそのもの、つまり「悲しい気持ち」という端的なキャッチフレーズに惹かれた。

ミディアムテンポな軽やかなメロディに、邦楽ポップスとは思わせないような爽やかな歌詞、ここには陰鬱さは垣間見られない。しかし、「悲しい気持ち」は「悲しい気持ち」なのだ。それ以上でもそれ以下でもない。

悩みながらも楽しく過ごしていた高校時代を思い出しながらこの曲を聴いている。あの頃は良かったなんて情けない憧憬に浸り、「悲しい気持ち」を聴く。悲しみが通り過ぎるまで。